大胸筋の起始停止、支配神経、髄節、鍛え方について書いています。
大胸筋は、分類上は腹部の筋の中の浅胸筋(せんきょうきん)
です。浅胸筋には、他に小胸筋、鎖骨下筋、前鋸筋が含まれ
全部で4つの筋からなります。
大胸筋(pectoralis major)は、浅胸筋の中で最も大きく、
胸部の前面を被う厚い扇状の筋です。
ボディビルの人が胸の筋をピクピク動かすパフォーマンスを
見たことがある人も多いのではないでしょうか!
あの筋ですね。
腹部の筋の分類について
解剖学的には、腹部の筋は、浅胸筋、深胸筋、横隔膜の3つに分類されます。
- 浅胸筋は、胸郭から起こり上肢の骨(上腕骨,肩甲骨,鎖骨)に付きます。
- 深胸筋は、肋骨を動かし,呼吸運動(胸式呼吸)に関与します。
- 横隔膜は、胸腔と腹腔を分ける筋で腹式呼吸に関係します。
分類 | 筋 | 髄節 | 支配神経 | |
腹部の筋 | 浅胸筋 | 大胸筋 | C(5)6,7,8, T1 | 内側および外側胸筋神経 |
小胸筋 | C(6)7,8,T1 | |||
鎖骨下筋 | C5,6 | 鎖骨下筋神経 | ||
前鋸筋 | C5,6,7 | 長胸神経 | ||
深胸筋 | 外肋間筋 | T1——11 | 肋間神経 | |
内肋間筋 | T1——11 | |||
最内肋間筋 | T1——11 | |||
肋下筋 | T4–11 | |||
胸横筋 | T2–6 | |||
肋骨挙筋 | C8,T1—–11 | C8神経後枝,脊髄神経後枝 | ||
横隔膜 | C3,4,5 | 横隔神経 |
大胸筋の概要
胸部の前面を被う厚い扇形の筋で、腋窩(えきか)の
前壁の大分部をつくります。
大胸筋の起始部は、3つに分けられており、それぞれの作用が異なります。
また、支配神経の髄節においても、大胸筋の上部
(鎖骨部)はC5、6、7の支配ですが、
内側(胸肋部)と下部(腹部)はC6,7,8、T1の支配となっています。
C6頸髄完全損傷者では,肘関節の伸展をさせる筋が麻痺
するため、手を固定して大胸筋を使って肩を内転させ
麻痺した肘伸展筋の代償を行います。
このような運動様式をCKC:閉鎖運動連鎖と言います。
大胸筋の起始
鎖骨部(大胸筋の上部)
鎖骨内側1/2~2/3の前面から起こり、筋線維は外下方へ向かいます。
胸肋部(大胸筋の内側部)
胸骨前面、第1~7肋軟骨から起こり、筋線維は水平方向へ向かいます。
腹部(大胸筋の下部)
腹直筋鞘の上部前葉から起こり、筋線維は外上方へ向かいます。
大胸筋の停止
大胸筋の上部、内側部、下部の各部から集まった筋線維は
扇状となって上腕二頭筋腱の前を越えて上部(鎖骨部)の
線維は下方へ,下部(腹部)の線維は上方へと向かって
捻れるようにして順序よく重なりながら、
上腕骨の大結節稜(だいけっせつりょう)に付きます。
上の赤丸で囲った部分(6)が右上腕骨の大結節稜です。
上記の筋線維のねじれは、不思議なことに
四つ這い(よつばい)になるとなくなります。
もともと、四つ這い(よつばい)生活をしていた名残のため、このような筋のねじれが生じたものと考えられています。
大胸筋の作用と鍛え方(動画)
参考動画を↓にあげています。
作用と鍛え方の解説は、この動画の次に書いています。
鎖骨部(大胸筋の上部)
- 肩関節の屈曲,内転,内旋
- 胸郭の挙上(吸息)
- ※肩関節100°外転位からの外転
鍛え方
上部線維は、肩関節の屈曲作用を有していますので、
効果的な鍛え方は、肩関節を屈曲させながら内転、内旋させる
ような負荷を加えるのが理想です。
肩関節の屈曲と内旋は分けてトレーニングする方が
やりやすいと思います。
ポジション:
・・仰臥位(あおむき)、立位でもOK
両手をお斜め45度外側に
下ろして開いた状態
方法:
・・チューブやワイヤーなどの負荷を両手に握って、
頭の前上方でクロスさせるように引き上げると、
肩関節の屈曲、内転負荷が加わり鍛えられます。
(チューブは、斜め45度下の方に固定です。)
ダンベルなどを使っても行うことができます。
※10回以上できないような負荷にすると筋肥大が
見込めますが、最初は軽めからスタートして慣れたら
高負荷にチャレンジしましょう。
胸肋部(大胸筋の内側部)
- 肩関節の内転,内旋
- ※肩関節屈曲位からの伸展
鍛え方
ポジション:
・・仰臥位(あおむき)
両手を真横(外転90度)で、肘を90度
曲げた状態
方法:
・・チューブやワイヤーなどの負荷を両手に握って、
胸の前でクロスさせるようにすると肩関節の内転、
内旋負荷が加わるため鍛えられます。
(チューブは、右は右外側、左は左外側に固定です。)
※10回以上できないような負荷にすると筋肥大が
見込めますが、最初は軽めからスタートして慣れたら
高負荷にチャレンジしましょう。
腹部(大胸筋の下部)
- 肩関節の内転,内旋
- 肩関節の下制
- ※肩関節屈曲位からの伸展
鍛え方
ポジション:
・・仰臥位(あおむき)、立位でもOK
両手を斜め45度上方に開き、バンザイしたような状態。
方法:
・・チューブやワイヤーなどの負荷を両手に握って、
胸のおへその前でクロスさせるようにすると肩関節の内転、
内旋、肩甲骨の下制負荷が加わるため鍛えられます。
(チューブは、斜め45度上方に固定です。)
※10回以上できないような負荷にすると筋肥大が
見込めますが、最初は軽めからスタートして慣れたら
高負荷にチャレンジしましょう。
大胸筋の支配神経・髄節
起始部 | 髄節 | 神経 |
上部(鎖骨部) | C5,6,7 | 外側胸筋神経 内側胸筋神経 |
内側部(胸肋部) | C6,7,8, T1 | |
下部(腹部) | C6,7,8, T1 |