下肢帯の筋<2>殿筋群とは?作用や支配神経(起始停止)のまとめ

下肢帯の筋の中で外寛骨筋に含まれる
殿筋群についてまとめています。

下肢帯の筋<1>で説明したように
下肢帯の筋は、内寛骨筋と外寛骨筋に
分けられ、外寛骨筋は殿筋群と
回旋筋群に分類されます。

殿筋群は、骨盤の後方で表層にあって
主に股関節の伸展と外転に作用します。

小殿筋以外は皮下で触知できます。

Sponsored Link

下肢帯の筋の分類

下肢帯の筋
内寛骨筋 小腰筋
大腰筋
腸骨筋
殿筋群 大殿筋
中殿筋
小殿筋
大腿筋膜張筋
回旋筋群 梨状筋
上双子筋
内閉鎖筋
下双子筋
大腿方形筋
外閉鎖筋

今回は、殿筋群についてまとめています。

下肢帯の筋<2>殿筋群について

以下の4つの筋からなります。

 

筋の名称 髄節 支配神経
大殿筋
gluteus maximus
L5,S1,2 下殿神経
中殿筋
gluteus medius
L4,5,S1 上殿神経
小殿筋
gluteus minimus
大腿筋膜張筋
tensor fasciae latae

▲中殿筋,小殿筋は片脚立位時に同側の骨盤を牽引し
反対側への骨盤傾斜を防ぐ働きをします。
これらの筋が筋力低下を起こすと
トレンデレンブルグ徴候Trendelenburg’s sign
立脚期に体幹を患側に傾ける
デュシャンヌ歩行Duchenne gaitが生じる原因となります。

Sponsored Link

1.大殿筋 gluteus maximus

殿部の最も表層にある大きい筋です。
上部線維と下部線維に分けられます。

下殿神経支配で、髄節はL5,S1,2です。

起始

上部
線維
・腸骨稜の後方
・腰背腱膜
・上後腸骨棘(PSIS)
・仙骨の外側
・尾骨の外側
下部
線維
・腸骨翼の外面で後殿筋線の後方
・仙結節靱帯
・中殿筋の筋膜

停止

上部
線維
大腿骨の大転子を被い
腸脛靱帯の深層へ
下部
線維
大腿骨の
殿筋粗面

一般的には、殿筋粗面へ付く
イメージが強いと思いますが
腸脛靭帯へ移行する部分も大殿筋の
特徴の一つです。

作用

上部
線維
・股関節の外転、外旋
下部
線維
股関節の伸展、外旋、内転

・骨盤の後傾

 

2.中殿筋 gluteus medius

三角形の厚い筋で大殿筋と
大腿筋膜張筋の間で触知できます。

上殿神経支配であり、髄節はL4,5,S1です。

起始

・腸骨翼の外面(腸骨稜の下方で
前および後殿筋線の間)
・腸骨稜の外唇
・殿筋筋膜

停止

・大転子の外側
(梨状筋としばしば癒合します)

作用

股関節の
・外転(全体・中部)
・内旋(前部線維)
・外旋(後部線維)

3.小殿筋 gluteus minimus

三角形の筋で中殿筋に被われるため
触知は困難です。

上殿神経支配であり、髄節はL4,5,S1です。

起始

・腸骨翼の外面
(前および下殿筋線の間から)

停止

・大転子の前外側
・股関節の関節包

作用

股関節の
・外転(随意収縮で関節包を引き、
股関節への関節包の挟み込みを防ぐ)
・内旋(前部線維)
・外旋(後部線維)

4.大腿筋膜張筋 tensor fasciae latae

中殿筋の前に位置する紡錘状の筋で、
この筋の▲短縮ではOber Testが陽性となります。

大腿骨近位部で腸脛靱帯に移行して
大腿の外側を下ります。

上殿神経支配であり、髄節はL4,5,S1です。

起始

・腸骨稜外唇の前方
・上前腸骨棘(ASIS)の外側面
・大腿筋膜の内面

停止

脛骨外側顆の前面

作用

・股関節の屈曲,外転(,内旋)

・膝関節の伸展

(,膝関節30°以上の屈曲位からは
股関節の屈曲に作用)

・下腿の外旋

・骨盤前傾

※腸脛靱帯 iliotibial tract

大腿の筋全体を包む大腿筋膜(深筋膜)の
外側部が厚く腱膜様になった部分。

上前腸骨棘と腸骨稜,一部は大殿筋の
上部線維、大腿筋膜張筋の停止腱として
起こり、大腿の外側を下ります。
その後、脛骨の外側顆の前外側面の
腸脛靱帯粗面に付くほか下腿筋膜に放散します。

解剖運動学(目次)へ戻る▶

Sponsored Link